【実例】登記簿の住所が古く所有者と連絡が取れない土地を買う方法を弁護士が解説

登記簿の住所が古く所有者と連絡が取れない土地を買う方法を弁護士が解説
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「土地を買おうとして登記簿を取ってみたら、所有者の住所が昭和の記載のまま。その住所に手紙を送ったら、『宛所に尋ねあたりません』と戻ってきてしまった」。

所有者がわからない土地に関するご相談の中で、最も多い入口がこのパターンです。

登記簿に記載されている所有者の住所は、所有者が引っ越したり亡くなったりしても、自動的には変更されません。そのため、何十年も前の住所がそのまま残っている土地は、全国に数多くあります。

こうした土地は、所有者が生きていたとしても、連絡が取れなければ買うことができません。ただし、調べ方と手続きを知っていれば、買える道は残っています。

この記事では、建物を建てるために土地を買いたい方や、隣の空き地を取得して一体で使いたい方に向けて、登記簿の住所が古く所有者と連絡が取れない土地の調べ方と、裁判所に管理人を選任してもらって土地を買う手続きについて、私が実際に担当した案件をもとに解説します。

先に結論をお伝えすると、ポイントは次の3つです。

▼この記事のポイント

  • 登記簿の住所が古く手紙が届かない土地は、所有者が生きていても、法律上は「所有者不明土地」として扱われ得ます。
  • 弁護士は職務上請求で住民票や戸籍をたどれますが、「保存期間経過により廃棄」で調査が途切れることがあります。
  • 調査が尽きても、「利害関係人」として所有者不明土地管理人や不在者財産管理人を裁判所に選任してもらうことで、土地を買える道が残ります。
目次

登記簿の住所が古い土地で実際に起きていること

「登記簿の住所が古く、所有者と連絡が取れない」というご相談をされるのは、建物を建てるために土地を購入した方、あるいは購入しようとしている方がほとんどです。業者の方もいれば、エンドユーザーの方もいます。

典型的なのは、次の2つのパターンです。

一つは、購入した土地の前面が私道で、建築のために私道所有者の承諾を取ろうと登記簿上の住所に手紙を出したところ、届かなかったというものです。

もう一つは、不動産業者の方が仕入れ用の土地建物を探していて、ちょうどよい物件を見つけ、登記簿上の所有者の住所に手紙を出したが、届かなかったというものです。

では、なぜ登記簿の住所が昭和や平成初期のまま残っているのでしょうか?

原因は単純で、「相続登記がされていないから」、あるいは「住所変更登記がされていないから」です。

住所変更登記はこれまで義務ではなく、引っ越しても住所変更登記をしない方が大半でした。相続が起きても相続登記をしないまま放置していれば、登記簿には何十年も前の所有者が、当時の住所のまま記載され続けます。

2026年4月からは住所変更登記も義務化されましたが、過去に放置されてきた登記簿上の住所が自動的に変更されるわけではありません。今ある「住所が古い土地」は、今後も当面残り続けます。

そして重要なのは、登記簿の住所から所有者にたどり着けない土地は、所有者が生きているかもしれない、あるいは亡くなって相続人がいるかもしれないにもかかわらず、法律上は「所有者の所在を知ることができない土地」、つまり所有者不明土地として扱われ得るということです。この点が、後で説明する管理人制度につながってきます。

【実例】手紙の届かない隣地を買ってアパートを建てたい

ここからは、私が実際に担当した案件をもとにお話しします。なお、ご依頼者が特定されないよう、場所や人物の名前など一部の情報は変更しています。

相談者の立場と買いたい土地の状況

ご相談者は、ある土地(ここでは土地Aとします)で長年生活されている方でした。土地Aの隣地は長年管理されておらず、草木が生い茂り、塀も崩れそうな状態。ずっと空き地のままで、所有者が誰なのかもわからないという状況でした。

隣地の登記簿を取ってみると、昭和30年に「甲野太郎」さん(仮名)が所有権を取得したこと、そして当時の住所が記載されていました。ところが、その住所に宛てて手紙を出しても、「宛所に尋ねあたりません」として返送されてきてしまいました。

ご相談者は、土地Aに建物を建てようと考えていましたが、可能であれば隣地も買い取り、土地Aと一体にして大きなアパートを建てたいという希望をお持ちでした。

相談前に試したことと止まった理由

ご相談に来られた時点でご自身が試されていたのは、登記簿上の住所に宛てて手紙を出した程度でした。

これは責められることではありません。一般の方が他人の住民票や戸籍を取ることはできないため、手紙が戻ってきてしまえば、そこから先は打つ手がないのが普通です。

弁護士による所有者の調べ方

弁護士に依頼すると、一般の方にはできない方法で所有者を調べることができます。ここでは、調査の基本的な流れと、その限界をお話しします。

職務上請求で住民票と戸籍をたどる

弁護士は、受任した案件について必要がある場合、職務上請求という手続きで他人の住民票や戸籍を取得することができます。所有者を探すときの手順は、おおむね次のとおりです。

  1. まず、登記簿上の住所地の役所に対して、本籍地の記載付きの住民票を申請します。
  2. 取得した住民票で、すでに他の住所に転居していることがわかれば、転居先の住所について住民票を申請します。これを繰り返して現在の住所を追いかけます。
  3. 住民票から本人が亡くなっていることがわかった場合は、本籍地の役所に戸籍を申請し、相続人がいるかどうかを調べます。

このように、登記簿の住所を出発点にして住民票と戸籍をつなぎ、所有者本人、あるいはその相続人にたどり着くのが基本的な流れです。

保存期間の経過で記録が途切れたときの対処法

ただし、この調査には限界があります。

住民票の除票などには保存期間があり、古いものは「保存期間経過により廃棄」されています。廃棄されてしまったら、住民票等での調査はそれ以上できません。昭和の住所からたどろうとすると、途中で記録が途切れることは珍しくないのです。

それでも、できることは残っています。対処法は2つです。

一つは、登記簿上の住所地に今住んでいる人に話を聞くことです。そこに「甲野太郎」さんはいなくても、甲野さんからその土地を買って住んでいる新しい所有者がいる可能性があります。その方にコンタクトを取り、甲野さんの所在を知らないか確認するという方法です。

もう一つは、裁判所に管理人を選任してもらうことです。登記簿上の住所地でも手がかりが得られなければ、次に説明する不在者財産管理人や所有者不明土地管理人の選任を検討することになります。

管理人を選任して管理人から土地を買う方法

所有者の所在がどうしてもわからない場合、裁判所に申し立てて、その土地を管理する人(管理人)を選任してもらい、管理人から土地を買うという方法があります。使える制度は主に次の2つです。

  • 所有者不明土地管理人
  • 不在者財産管理人

所有者不明土地管理人と不在者財産管理人の使い分け

所有者不明土地管理人は、所有者がわからない、または所在がわからない土地について、地方裁判所が選任する管理人のことです。

管理の対象はその土地に限られ、管理人は裁判所の許可を得て土地を売却することができます。所有者が生きているとわかっていても、所在がわからなければ、この制度を使うことができます。

不在者財産管理人は、所在のわからない人(不在者)の財産全体を管理する人のことです。家庭裁判所が選任します。

土地だけでなく、その人の財産全般を管理するため、たとえば遺産分割協議に参加してもらう必要がある場合には、こちらを使うことになります。

私の整理としては、当該土地を購入したいがために管理人を選任するのであれば、所有者不明土地管理制度を使うのがよいと考えています。その他、遺産分割協議の必要がある場合などは、不在者財産管理人の選任が必要になります。

申立てができるのは「利害関係人」だけ

ここが、一番お伝えしたいポイントです。

管理人の選任を裁判所に申し立てられるのは、「利害関係人」に限られます。その土地について法律上の利害を持っている人という意味です。誰でも「買いたいから」という理由だけで申し立てられるわけではありません。

従来、利害関係人として想定されてきたのは、隣地の所有者や、道路・公共施設をつくる公共事業者でした。そのため「隣の土地でもないのに、買いたいだけの人が申し立てるのは無理だろう」と考えて、相談に来られる前に諦めてしまう方が少なくありません。

しかし、私は隣地所有者でなくても、購入希望者が利害関係人として申立てができる場合はあると考えています。

隣地所有者でなくても申立てができる条件

ポイントは、「購入計画に具体性」があり、「土地建物の利用に利害」が認められるかどうかです。具体的には、次のものなどが確認されます。

  1. 何をどう建てるか(用途・規模・構造・戸数)
  2. 工程表があるか
  3. 資金計画が練られているか
  4. なぜ「この土地」を利用するのか、理由がきちんとしているか(たとえば、隣接地に不動産を持っていて一体利用できる、など)

つまり、「この土地でこういう事業をする」という計画が具体的であればあるほど、利害関係人として認められやすくなります。単に「その土地を安く手に入れて転売したい」というだけでは、利害関係は認められにくいと考えています。

裏を返せば、申立ての前に購入計画をどこまで具体的に固められるかが、所有者不明土地を買えるかどうかの分かれ目になります。この点は、弁護士と一緒に組み立てていくことをおすすめします。

購入の目的ごとに利害関係人と認められやすいかどうかは、次の記事でも解説しています。

期間と費用の目安

期間と費用は事案や裁判所によって異なるため一概には言えませんが、私の経験上の目安は次のとおりです。

制度 期間の目安 費用の目安
所有者不明土地管理人

(地方裁判所)

半年程度

(所有者の調査、申立てから選任、売却許可を経て契約・登記まで)

裁判所に納める予納金は30万〜50万円程度が多い。

管理が売却で終わるため、余った予納金は返還されるのが通常。

不在者財産管理人

(家庭裁判所)

半年〜1年程度 予納金は50万円程度。

不在者が現れるか失踪宣告がされるまで管理が続くため、予納金が戻りにくい。

弁護士費用

(いずれの制度でも)

― 50万〜100万円程度。

土地の購入が目的であれば、所有者不明土地管理制度の方が、期間・費用ともに軽く済む印象です。対象が土地に限定され、売却で手続きが完結するためです。

所有者不明土地管理制度で土地を買うときの注意点は、次の記事で解説しています。

最適解を提案します

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所有者はすでに死亡し相続人の1人が行方不明だった

ここからは、先ほどの案件がその後どう進んだのかをお話しします。調査を進めた結果、相談当初の前提が大きく変わることになりました。

戸籍調査で相続人5人のうち1人が行方不明と判明

「甲野太郎」さんの戸籍を調べたところ、すでに亡くなっており、相続人が5名いることが判明しました。「生きているはずの所有者を探す」つもりで始めた調査が、この時点で「相続人を探し、相続人全員と話をまとめる」事案に変わったということです。

5名の相続人の住所をそれぞれ調査しました。4名は所在がわかりましたが、1名だけが行方不明になっていました。

相続した土地を売るには、相続人全員の関与が必要です。この1名が見つからない限り、話は前に進みません。

そこで、行方不明の相続人について、不在者財産管理人の選任を家庭裁判所に申し立てました。この案件では土地を買うだけでなく、相続人の間で遺産分割の調整が必要だったため、所有者不明土地管理人ではなく不在者財産管理人を使っています。

不在者財産管理人を選任して隣地を取得

選任された不在者財産管理人と、他の相続人の方々との間で調整を行いました。最終的に、ご相談者がこの土地を取得し、相続人の方々には代償金を支払うという内容で解決しています。

これにより、ご相談者は念願だった隣地を含めた一体利用ができるようになりました。

登記簿の住所が古い土地は相続の問題に変わることが多い

この事例から私がお伝えしたいのは、登記簿の住所が古い土地は、調べてみると所有者がすでに亡くなっていて、相続人が複数いることが多いということです。そして、相続人の中に1人でも連絡の取れない方がいると、不在者財産管理人のような手続きが必要になります。

相続人の1人と連絡が取れない場合に取り得る手続きは、次の記事で詳しく解説しています。

手紙が戻ってきた段階では「所有者が見つからない」という一つの問題に見えますが、調査を進めると、相続人探索や遺産分割の問題に姿を変えていきます。

それでも、手続きの道は残っています。諦めずに相談していただきたいと思います。

手紙が戻ってきた段階で弁護士へ相談する

「登記簿上の住所に手紙を出して戻ってきた」という段階でご相談いただくのが最も効率的です。一般の方にはそこから先の調査手段がありませんし、弁護士であれば職務上請求で住民票・戸籍を順にたどることができます。

ご相談の際に用意していただきたいのは、土地の登記事項証明書(登記簿謄本)、公図、地図など、物件の状況がわかる資料です。併せて、次の項目を整理しておいていただけると、管理人選任の申立てを見据えた相談ができます。

  • その土地をどう使いたいのか
  • 建物の用途や規模
  • 資金計画 など

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所有者がわからない土地の購入はたきざわ法律事務所にご相談ください

所有者がわからない土地を買うには、所有者や相続人の調査から、管理人選任の申立て、管理人や相続人との調整、売買契約まで、一連の手続きを組み立てる必要があります。

当事務所がお役に立てるのは次の3点です。

  • 所有者・相続人の調査から管理人選任の申立てまで一貫して対応
  • 利害関係人として認められる申立ての組み立て
  • 裁判所や管理人とのスピーディーなやりとり

所有者・相続人の調査から管理人選任の申立てまで一貫して対応

所有者の調査と裁判所への申立ては、別々の専門家に頼むこともできます。しかし、調査の結果によって使う制度が変わるため、分けて進めると二度手間になりがちです。

当事務所では、職務上請求による住民票・戸籍の調査から、管理人の選任申立て、その後の売買契約まで、窓口を分けずに対応します。

利害関係人として認められる申立ての組み立て

当事務所は、不動産分野に特化しています。

先ほどお話ししたとおり、購入希望者が管理人の選任を申し立てるには、利害関係人として認めてもらう必要があります。そのためには、「この土地で何を建て、どう使うのか」という計画を、裁判所に伝わる形で整理しなければなりません。

当事務所では、不動産の実務を踏まえて、計画のどこを具体化し、申立書でどう説明するかまでを一緒に組み立てます。

裁判所や管理人とのスピーディーなやりとり

管理人を選任して土地を買うまでには、裁判所、選任された管理人、そして相続人など、やりとりをする相手が多くなります。どこかで連絡が滞ると、その分だけ全体の期間が延びてしまいます。

当事務所は少人数の事務所ですので、弁護士が直接やりとりを行い、進捗をこまめにご報告しながら進めます。

最適解を提案します

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所有者と連絡が取れない土地についてよくある質問

最後に、登記簿の住所が古く、所有者と連絡が取れない土地について、ご相談の際によくいただく質問にお答えします。

登記簿の住所に手紙を送っても戻ってきてしまう場合は次に何をすればよい?

登記簿上の住所地で住民票を申請し、転居先や生死を確認するのが次の一手です。

ただし、他人の住民票は一般の方は取ることができません。弁護士に相談し、職務上請求で調査してもらうことになります。

所有者が生きているとわかっていても所有者不明土地管理制度は使えますか?

使うことができます。

所有者不明土地管理制度は、所有者が誰かわからない場合だけでなく、所有者はわかっているが所在がわからない場合も対象です。

隣の土地の所有者でなくても管理人選任の申立てはできますか?

場合によります。

その土地を購入し、利用することについて具体的な計画が認められる場合には、隣地所有者でなくても申立てができます。

2026年4月の住所変更登記の義務化で古い住所は自動的に変更されますか?

変更されません。

義務化は今後の登記についてのもので、過去に放置された登記簿上の住所が自動的に変更されるわけではありません。

所有者探索から購入までの期間と費用の目安はどのくらいですか?

一概には言えませんが、不在者財産管理人を使う場合は半年から1年程度、予納金は50万円程度です。

所有者不明土地管理制度を使う場合は半年程度、予納金は30万〜50万円程度が多く、不在者財産管理人よりは安く済む印象です。

これとは別に、弁護士費用がいずれも50万〜100万円程度かかります。

まとめ

登記簿の住所が古く、所有者に手紙を送っても届かない土地は、調べ方と手続きを知っていれば買える可能性があります。この記事でお話しした流れを振り返ります。

  • 登記簿の住所が古いのは、相続登記や住所変更登記がされていないためで、2026年4月の義務化でも過去の分は変更されない
  • 弁護士は職務上請求で住民票と戸籍をたどり、所有者本人や相続人を調べられる。ただし保存期間の経過で記録が途切れることがある
  • 調査が尽きた場合は、所有者不明土地管理人(土地を買うだけの場合)や不在者財産管理人(遺産分割が必要な場合)を裁判所に選任してもらい、管理人から買う
  • 申立てができるのは利害関係人に限られるが、購入計画が具体的であれば、隣地所有者でなくても認められる場合がある

今回ご紹介した案件のように、調査を進めると「所有者がすでに亡くなっていて相続人が複数いる」「その中に連絡の取れない方がいる」という展開になることも珍しくありません。それでも、それぞれの状況に応じた手続きがあり、最終的に土地を取得できたケースは実際にあります。

大切なのは、手紙が戻ってきた段階で諦めず、物件の資料と「この土地をどう使いたいか」という計画を持って、早めに弁護士に相談することです。計画が具体的であるほど、利害関係人として認められやすくなり、選べる手続きの幅も広がります。

所有者がわからない土地の購入でお困りの方は、たきざわ法律事務所にご相談ください。

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