【実例】相続人の1人と連絡が取れない不動産を売却する方法は?弁護士がわかりやすく解説

相続人の1人と連絡が取れない不動産を売却する方法は?弁護士がわかりやすく解説
この記事を書いた弁護士は…

相続した不動産の売却に関するご相談で、実際によくある状況です。

相続した不動産を売るには、相続人全員の合意が必要です。1人でも連絡が取れない相続人がいると、他の全員が売却に賛成していても、遺産分割も売却も止まってしまいます。

仲介会社に相談しても「全員の同意がないと進められません」と言われ、そこで手詰まりになる方がほとんどです。

しかし、連絡が取れない相続人がいる不動産を、売れないまま放置する必要はありません。まず弁護士の調査で所在が判明することが多く、どうしても見つからない場合にも、裁判所の手続きを使って売却まで進める方法が用意されています。

この記事では、相続人の1人と連絡が取れずに不動産の売却が止まっている方に向けて、連絡が取れない相続人の調べ方と、見つからない場合に売却まで進める4つの方法について、私が実際に担当した事案をもとに解説します。

先に結論をお伝えすると、ポイントは次の3つです。

▼この記事のポイント

  • 相続した不動産は、相続人全員の同意がなければ売却できません。4人の同意書があっても、登記は動きません。
  • 「音信不通」と、法律上の「所在不明」は別です。弁護士が戸籍の附票をたどると、私の感覚では半数程度は現住所が判明します。
  • どうしても見つからない場合は、不在者財産管理人の選任など、裁判所の手続きを使って売却まで進める方法があります。
目次

相続人の1人と連絡が取れない不動産で実際に起きていること

「相続人の1人と連絡が取れず、不動産が売れない」というご相談は、相続人の方から直接いただくこともありますが、多いのは不動産会社経由です。

不動産を売りたい相続人の方がまず不動産会社に相談し、その不動産会社から「相続人の1人と連絡が取れず、売却が進められない」と私のところに連絡をいただくという流れです。

なぜ、相続人の大半が同意していても売れないのか?一言で言えば、不動産を相続した場合、相続人全員の同意がないと売却できないからです。

遺産分割協議は相続人全員で行う必要があり、1人でも欠けていれば成立しません。4人の同意書を集めても、残る1人の関与がなければ、相続登記も、買主への所有権移転登記も動かないのです。

そして、行方のわからない相続人の持分は、なくなるわけではありません。その方の持分は原則としてそのまま残り、他の相続人が勝手に処分することはできません。「どうせ連絡が取れないのだから」と、4人で進めてしまうことはできないということです。

【実例】兄弟5人のうち1人が20年前から音信不通だった実家の売却

ここからは、私が実際に担当した事案をもとにお話しします。ご依頼者が特定されないよう、一部の情報は変えています。

相続人の構成と、売ろうとしていた不動産

相続財産は、実家の土地建物でした。

相続人は亡くなった親御さんのお子さん5名で、いずれも50代から60代。そのうち1名は、他の兄弟とも折り合いが悪く、20年前から音信不通になっていました。

今回親御さんが亡くなったことも知らせていない、というより、所在がわからないのでそもそも知らせることができない状態でした。

ご相談者は、この実家の不動産を売却したいと考えており、行方不明の1名を除く他の兄弟の同意は、すでに取れていました。

ご相談時点の状況

ご相談に来られた時点では、仲介会社に売却の相談をしたくらいで、そこから先に進めない状態でした。

4人の意思はまとまっているのに、1人が見つからないために遺産分割も売却もできない。このパターンのご相談は、ほぼ例外なくこの段階で止まっています。

本当に所在不明なのかを弁護士の調査で確かめる

連絡が取れない相続人がいるとわかったとき、最初にやるべきことは、「本当に所在がわからないのか」を確かめることです。ここで所在が判明すれば、裁判所の手続きを使わずに売却まで進められる可能性があります。

戸籍の附票をたどれば半数程度は現住所が判明する

ご家族にとっては「20年音信不通」でも、その方が住民登録をして普通に生活しているのであれば、所在を調べることはできます。

弁護士は職務上請求で戸籍や戸籍の附票(住所の履歴が記載されたもの)を取得できるため、本籍地から附票をたどることで現住所にたどり着けることがあります。

私の感覚では、こうした「音信不通」の相続人のうち半数程度は、調査によって現住所が判明します。「行方不明だから手続きができない」と決めつける前に、まず調べてみる価値は十分にあります。

見つかった場合は手紙で協力を依頼し拒まれたら遺産分割調停へ

現住所がわかれば、まずは手紙で相続が発生したことと、不動産を売却したい意向を伝え、遺産分割への協力をお願いします。

連絡を無視された、あるいは協力を拒まれた場合は、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てます。調停は裁判所が間に入る話し合いの手続きで、相手が応じなければ最終的には審判で決めてもらうことができます。

所在がわかっている以上、本人が動かなくても手続きを前に進める道はあるということです。

所在がわからない場合に取り得る4つの方法

調査をしても所在がわからない場合、取り得る方法は大きく4つあります。

結論からお伝えすると、今回の事案では、①不在者財産管理人を選任する方法を採りました。この事案は所有者不明土地管理制度ができる前のものでしたので、選択肢は①か②しかなかったという事情もあります。

方法 どんな場合に使うか 注意点
①不在者財産管理人

(家庭裁判所)

相続人が誰かはわかっているが所在がわからない

遺産分割をまとめてから売却したい

選任まで時間と予納金がかかる

不在者に不利な遺産分割は認められにくい

②失踪宣告

(家庭裁判所)

生死不明の状態が7年以上続いている

不明者を相続人から外したい

手続きに半年〜1年程度かかる

不明者の子などが新たに相続人になることがある

③所在等不明共有者の持分取得譲渡

(地方裁判所)

相続開始から10年以上経っている

不明者の持分を買い取るか不動産全体を売りたい

相続開始から10年未満は使えない

先に相続登記が必要で持分相当額の供託もいる

④所有者不明土地管理人

(地方裁判所)

相続開始から10年未満で管理人を使いたい

不明者の持分だけを早く処理したい

管理人は遺産分割には参加できない

売却には裁判所の許可が必要

①不在者財産管理人は遺産分割に参加してもらう方法

所在のわからない相続人の代わりに、家庭裁判所が選任した管理人が遺産分割協議に参加する方法です。

相続人が誰かは特定できているが、所在だけがわからないという、今回のような場面に最もなじみます。

不在者財産管理人を選任して、相続人の1人が行方不明の土地を買い取った事例は、次の記事で紹介しています。

②失踪宣告は7年以上生死不明の相続人を相続人から外す方法

生死不明の状態が7年以上続いている場合は、失踪宣告によってその方を亡くなったものとして扱い、相続関係を確定させる方法もあります。ただし、公告期間が長く、時間がかかります。

③所在等不明共有者の持分取得譲渡は相続開始から10年が要件

相続登記をしたうえで、所在のわからない共有者の持分を裁判所の決定で取得したり、不動産全体を第三者に譲渡したりする制度です。

遺産共有の場合は相続開始から10年を経過していることが必要で、持分の時価相当額を供託する必要があります。

④所有者不明土地管理人は不明者の持分だけを売却する方法

不明者の持分について管理人を選任し、管理人が裁判所の許可を得て持分を売却する方法です。

相続開始から10年未満でも使えますが、管理人は遺産分割には参加できません。

所有者不明土地管理制度の仕組みは、次の記事で解説しています。

最適解を提案します

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不在者財産管理人の選任から遺産分割調停での解決まで

ここからは、先ほどの事案で不在者財産管理人を選任してから、売却できる状態になるまでの流れをお話しします。

所在がわからず遺産分割協議が開けなかった

壁になったのは、言うまでもなく「1人が見つからない」ことです。

調査をしても所在がわからなかったため、家庭裁判所に不在者財産管理人の選任を申し立てました。選任には一定の期間がかかり、予納金も必要になりますが、ここを通らない限り遺産分割は動きません。

不在者財産管理人を加えた遺産分割調停で合意

不在者財産管理人が選任された後は、遺産分割調停を申し立て、管理人を含めた相続人全員で協議を行い、調停で解決しました。

これによって遺産分割が成立し、実家の不動産を売却できる状態になりました。

音信不通の相続人がいても売却は実現できる

相続人の1人が音信不通でも、不動産が永久に動かせなくなるわけではありません。まず調査をして、見つかれば話し合いか調停、見つからなければ管理人の選任という順に進めれば、売却までたどり着けます。

ただし、いずれも時間がかかりますので、売却を急ぐ事情があるなら早めに動き出すことが大切です。

連絡が取れない相続人がいるとわかったらまず相続人関係図を作る

結論からお伝えすると、最初にやるべきことは相続人関係図を作ることです。

亡くなった方の出生から死亡までの戸籍を集め、誰が相続人なのかを確定させます。相続人の範囲が確定して初めて、連絡の取れない方が誰で、どの手続きが使えるのかを判断できます。

戸籍の収集は当事務所でも行えますので、手元にある範囲で結構です。

もう一つは、売却を考え始めた段階でご相談いただくことです。

管理人の選任や調停には時間がかかります。買主が決まってから慌てるのではなく、早い段階でご相談いただくと、全体のスケジュールを見通して進めることができます。

最適解を提案します

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連絡が取れない相続人がいる不動産の売却はたきざわ法律事務所にご相談ください

相続人の1人と連絡が取れない不動産の売却は、相続人調査、裁判所の手続き、他の相続人や買主との調整が一体になった事案です。

当事務所がお役に立てるのは次の3点です。

  • 相続人調査から管理人選任・遺産分割調停まで一貫して対応
  • 相続からの経過年数やご家族の事情に合わせた手続きの選択
  • 仲介会社・買主と連携した売却スケジュールの管理

相続人調査から管理人選任・遺産分割調停まで一貫して対応

相続人の調査と裁判所の手続きは、別々の専門家に依頼することもできます。しかし、調査の結果によって使う手続きが変わるため、分けて進めると二度手間になりがちです。

当事務所では、職務上請求による戸籍附票の調査と相続人関係図の作成から、不在者財産管理人の選任申立て、遺産分割調停まで、窓口を分けずに対応します。

相続からの経過年数やご家族の事情に合わせた手続きの選択

先ほどご説明したように、連絡が取れない相続人がいる場合の手続きは4つあり、使える条件がそれぞれ異なります。たとえば、相続開始から10年を過ぎているかどうかで、選べる手続きが変わります。

当事務所では、相続からの経過年数、不動産以外の遺産の有無、売却を急ぐかどうかを伺ったうえで、期間と費用の負担が最も少ない手続きをご提案します。

仲介会社・買主と連携した売却スケジュールの管理

裁判所の手続きには時間がかかるため、仲介会社や買主との間で売却時期の見通しを共有しておくことが欠かせません。

当事務所では、手続きの各段階でどのくらいの期間がかかるかを仲介会社と共有し、買主の決済時期と手続きの完了時期がずれないように調整しながら進めます。

最適解を提案します

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相続人と連絡が取れない不動産の売却についてよくある質問

最後に、相続人と連絡が取れない不動産の売却について、ご相談の際によくいただく質問にお答えします。

相続人の1人と連絡が取れない場合は他の相続人だけで売却できますか?

売却できません。相続した不動産の売却には相続人全員の同意が必要です。

連絡の取れない方を除いて進めることはできず、不在者財産管理人の選任などの手続きが必要になります。

行方不明の相続人の持分はどうなりますか?

持分はなくなりません。行方不明であっても、その方の持分は原則としてそのまま残ります。

他の相続人が勝手に処分することはできません。

不在者財産管理人の選任にはどのくらいの期間と費用がかかりますか?

目安は半年から1年程度、裁判所に納める予納金は50万円程度です。事案によって異なりますので、一概には言うことができません。

なお、これとは別に弁護士費用がかかります。

相続から10年経っていないと所在等不明共有者の持分取得は使えませんか?

使えません。遺産共有の場合、所在等不明共有者の持分取得譲渡の制度は、相続開始から10年を経過していることが要件です。

10年未満であれば、不在者財産管理人や所有者不明土地管理人を検討します。

買主から融資が下りないと言われた場合はどうすればよいですか?

現金で決済できる買主に切り替えることをおすすめします。

不在者財産管理人を選任し、遺産分割協議まで整えて売却に出したのに、買主の融資が組めずに流れてしまうことは実際にあります。

他の相続人との関係もありますので、確実に決済できる買主、具体的には融資ではなく現金で決済できる不動産業者などを確保することが欠かせません。

まとめ

相続人の1人と連絡が取れない不動産でも、手順を踏めば売却まで進めることができます。この記事でお話しした内容を振り返ります。

  • 相続した不動産は相続人全員の同意がなければ売却できず、行方不明の相続人の持分も勝手に処分できない
  • 「音信不通」と「所在不明」は別で、弁護士が戸籍の附票をたどると半数程度は現住所が判明する
  • 見つかって協力を拒まれた場合は遺産分割調停、見つからない場合は不在者財産管理人など4つの方法がある
  • 4つの方法は相続開始からの経過年数や遺産の内容で使い分ける
  • 最初にやるべきことは相続人関係図の作成で、売却を考え始めた段階で相談するとスケジュールを見通せる

今回ご紹介した事案では、20年音信不通の相続人について不在者財産管理人を選任し、遺産分割調停を経て、実家の不動産を売却できる状態にすることができました。相続人の1人と連絡が取れないからといって、不動産を売れないまま抱え続ける必要はありません。

注意していただきたいのは、どの手続きも半年から1年程度の時間がかかることです。買主が決まってから動き出すと、決済時期に間に合わず、せっかくの売却が流れてしまうこともあります。

売却を考え始めた段階で、手元にある戸籍や不動産の資料を持ってご相談ください。連絡が取れない相続人がいる不動産の売却でお困りの方は、たきざわ法律事務所にご相談ください。

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